Perspective ~America

タイトル パースペクティブ (Perspective)
アーティスト アメリカ (America)
レーベル/番号 Capital Records, ST-12370
Perspectiveのジャケット表 PerspectiveのA面のレーベル

1984年にリリースされた、アメリカ(America)のスタジオ録音としては通算12枚目のアルバム、『パースペクティブ(Perspective)』を紹介いたします。


最初に告白しておきますと、本アルバムを最初に聴いた音源はLPレコードではありませんでした。20代終りごろ、アンプが壊れレコードを聴けない時期がありました、仕事で激務が続き修理依頼をする余裕がなかったのです。


それでも新しい音楽に飢えていて、買い求めたものがあります。それは、街中に出店してワゴンセールに見せかけた海賊版のカセットテープです。海賊版といっても1500円程度とボッタクリでしたが、新譜中心の品ぞろえ、CDが3000円超の時代。背に腹かえられなく手が出てしまいました。同じ思いの方が大勢いて売れ行きは上々のようでした。今ならすぐ摘発の対象になり、買い手も罪に問われるかも知れません。30年も前のことなので、時効になっていることを祈り告白させて頂きました。


当時、10本近くは買ったと思います。ウォークマン、ラジカセで聴き込むなかで、一番印象に残ったアルバムが『Perspective』でした。カセットテープ全盛の時代に「音楽を楽しむだけならラジカセで十分」という声をよく聞きましたが、今でも100パーセントの真理だと思っています。


前置きが長くなりました。アメリカは、ジェリー・ベックリー(Gerry Beckley)、デューイ・バネル(Dewey Bunnell)、ダン・ピーク(Dan Peek)の3人によりイギリスで結成されました。3人とも父親がロンドンに駐留するアメリカ軍人で、同じアメリカンスクールに通う仲間でした。


1971年にデビューアルバム『アメリカ(America)』は、収録された『名前のない馬(A Horse with No Name)』のシングル共に全米1位となる輝かしいデビューを飾ります。翌72年のセカンドアルバム『ホームカミング(HOMECOMING)』では、アコースティックギターの華麗なイントロが特長の『ヴェンチュラ・ハイウェイ(Ventura Highway)』が大ヒット。これらの活躍で、73年のグラミー賞・最優秀新人賞に選ばれます。『ヴェンチュラ・ハイウェイ』には、よほど愛着があると見えて、彼らの公式HPのドメイン名『http://www.venturahighway.com/』にもなっています。私も大好きな曲です。


75年リリースの5thアルバム『ハート(Heart)』からシングルカットされた『金色の髪の少女(Sister Golden Hair)』の大ヒット(全米1位)により「金色の髪の少女コンテスト」を世界的規模で開催するなど、華々しい活躍が続きました。


77年の7作目『ハーバー(Harbor)』を最後にダン・ピークが脱退。レコード会社も、ワーナー・ブラザース(Warner Bros.)からキャピトル(Capitol)へ移籍、ジェリー・ベックリーとデューイ・バネルのデュオで再出発しました。『Perspective』は、デュオとして5枚目のアルバムです。


Perspectiveのジャケット表 Perspectiveのジャケット裏

上はジャケット表裏の写真で、曲想とよくマッチしています。ポートレイトの左がデューイ・バネル、右がジェリー・ベックリーです。アメリカといえば、親しみやすいメロディー・ラインと、爽やかなハーモニーがすぐに思い浮かびます。本盤の内省的で抑制の効いた内容に、最初聴いたときはイメージがかけ離れているので驚きましたが、その時の気分にフィットして愛聴盤となりました。特に哲学的な心象世界を想起させる『(A3) Can't Fall Asleep To A Lullaby』『(A4) Special Girl』『(A5) 5th Avenue』の流れが大好きになりました。


つらい時は、明るく元気づけてくれる曲を聴くということもあるでしょうが、私は等身大で寄り添ってくれる曲を選ぶことが多い気がします。アル・スチュワート(Al Stewart)にハマったのもこの頃でした。


若い頃は、忙しくなるほど音楽や本が恋しくなりましたが、激務も度を超えると、そんな気力も失せ、ただただ睡眠欲に支配されることを30代の前半に経験しました。また、関係のない話をしてしまいました。彼らの他のアルバムの紹介の時に埋め合わせをしたいと思います。


本盤は評論家の受けもあまり良くなく、セールス的にも低調だったようです。これを最後にメジャーレーベルからのアルバム・リリースはないようですが、本盤において彼らは、今までの流れから何か変えようとしていたのは確かで、退歩ではなく成熟に向かったのだと私は思っています。



[Tracklist]  

A1 We Got All Night 3:27
A2 See How The Love Goes 3:17
A3 Can't Fall Asleep To A Lullaby 3:46
A4 Special Girl 3:47
A5 5th Avenue 3:47
B1 (It's Like You) Never Left At All 3:25
B2 Stereo 3:21
B3 Lady With A Bluebird 3:07
B4 Cinderella 3:57
B5 Unconditional Love 3:08
B6 Fallin' Off The World 3:30