I'm All Smiles ~Hampton Hawes

タイトル アイム・オール・スマイル (I'm All Smiles)
アーティスト ハンプトン・ホーズ (Hampton Hawes)
レーベル/番号 コンテンポラリー(Contemporary) ,S7631
I'm All Smileのジャケット表 I'm All SmileのA面のレーベル

ハンプトン・ホーズ(Hampton Hawes)のライブ録音のLPレコードをもう一枚。『アイム・オール・スマイルズ(I'm All Smiles)』。ジャケットの右上をよく見ると、値札の片割れだろうか、タックインデックスがベタッと貼られている。中古レコードで稀にみかけるが、無理にはがそうとして破けてしまった経験があるので、そのままにしている。しかし、ハンプトン・ホーズが気の毒に思えてならない。いつか除去にトライしたいと考えている。



ジャケット裏のタイトル&共演者&プログラム


上はジャケット裏のタイトル&共演者&演奏プログラム。コンテンポラリーで見慣れている四角い枠で囲まれたデザインとは異なる。レッド・ミッチェル(Red Mitchell)のベース、ドナルド・ベイリー(Donald Bailey)のドラムのトリオ構成。1966年4月30日と翌5月1日の2日間、ロサンゼルスの「Mitchell's Studio Club」でのライブ。この時の録音は別アルバム『ザ・セイアーン(The Seance)』にも収録されている。


冒頭の曲がアルバム・タイトルの『アイム・オール・スマイルズ(I'm All Smiles)』。B面の最初が『ザ・シャドウ・オブ・ユア・スマイル(The Shadow of Your smile)』と、スマイルで韻を踏んでいる。『ザ・シャドウ・オブ・ユア・スマイル』は、1965年の映画『いそしぎ』のテーマ曲としてアカデミー歌曲賞を受賞した美しいポピュラー・ソング。本アルバムのなかでもクライマックスにあたる演奏と言える。


右下に、丸囲みのP(著作権)マークに続き「1973 Contemporary Records, Inc.」という表記がある。となると、本盤はレコーディングから7年後の1973年に発売されたと考えられるが、後述のレコード番号と矛盾しているようで悩ましい。



ジャケット裏の演奏風景の写真


ジャケット裏に、ライブハウスらしい演奏風景の写真も掲載されている。



Hampton Hawes Trio Vol.1のA面のレコード番号 Hampton Hawes Trio Vol.1のB面のレコード番号

内周の刻印は、左からA面が「LKS-323-D1」、B面が「LKS--324-D1」と、ステレオ通算162枚目のアルバム。「D1」の表記から、AB面ともオリジナルのファーストプレス。すると、本盤の初回リリースは、レコーディングから7年後の1973年なのだろうか?それとも、最初のメタルマスター、またはスタンパーが長らく保管されていたのか?


おなじみの私のバイブル、山口克巳著『LPレコード新発見』(誠文堂新光社)によると、同じカッティングでも、レコードの重さが違う、レーベルの色が違うなど、プレス工程の異なる盤が存在するという。本盤も、最初のカッティングマスターが長く使い回されプレスされたと考えるのが妥当な気がする。


また、コンテンポラリーのレコードは、ファーストプレスの「D1」でなくても、「オリジナル盤」の表記で中古レコード店に並ぶことが普通である。ジャケットの「TECHNICAL NOTE:」を参照していると、時代が下るにつれ、カッティングの機器も技術も向上しているのが分かる。「ファーストプレスでなければオリジナル盤ではない」という考えもあるが、レコード番号に「LKL(モノラル)」「LKS(ステレオ)」のプレフィックスがあれば、品質管理に信頼の置けるコンテンポラリーでカッティングされたレコードに間違いないので、オリジナル盤として売られることについて私に異存はない。



前ページの『オータム・リーヴス・イン・パリ(Autumn Leaves in Paris)』は、かなり変わったライブ録音と紹介したが、本盤の録音はオーソドックスで安定感がある。中央にハンプトン・ホーズのピアノ、左にドナルド・ベイリーのドラム、右にレッド・ミッチェルのベース。演奏の内容は『オータム・リーヴス・イン・パリ』以上に、ビル・エヴァンスにも通ずる印象派の演奏を聴かせてくれる。彼のピアノと、レッド・ミッチェルのベースとの競演は、インタープレイと称するにふさわしい。


3回に分けて、ハンプトン・ホーズのアルバムを6枚紹介してきました。初回の『トリオ1』『トリオ2』には共通点が多いが、彼を知らない人が、それぞれブラインドで聴かされたら同一人物の演奏とは、とても考えられないはずである。彼の演奏は出来不出来が激しいという評価を下す評論家もいるが、少なくともこの6枚に関しては、いずれも高いレベルにあり、彼の奥深さを印象づけてくれる。



[参考文献]

・山口克巳著『LPレコード新発見』(誠文堂新光社、2005)


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