Duke Ellington & John Coltrane
(impulse!, AS-30-A)

タイトル デューク・エリントン&ジョン・コルトレーン (Duke Ellington & John Coltrane)
アーティスト デューク・エリントン&ジョン・コルトレーン (Duke Ellington & John Coltrane)
レーベル/番号 インパルス!(impulse!), AS-30-A
Duke Ellington & John Coltraneのジャケット表 Duke Ellington & John ColtraneのA面のレーベル
刻印VANGELDER Duke Ellington & John ColtraneのB面の刻印VANGELDER

新社会人、大船の出会い

このレコードには懐かしい思い出が詰まっている。


1980年(昭和55年)に新社会人になった私は、2時間半かけて自宅がある埼玉県上尾から神奈川の大船まで電車通勤を数年間続けた。電車の少しの遅れぐらいで遅刻は許されないので早めに家を出て、大船駅前バス停近くの小さな喫茶店で半時ほど時間を潰すのを日課としていた。


その喫茶店に数十枚のLPレコードと、テクニクスのあの縦置き可能なレコードプレーヤー(SL-V5?)が置かれていた。客は私一人ということがたびたびで、あるとき思い切って「レコードかけてもらっていいですか」とお願いすると「いいですよ」ということになった。

そこでよく聴いたのが「キャンディーズ」と「スタイリスティックス(The Stylistics)」のベスト盤、そしてこの『Duke Ellington & John Coltrane』の3枚。LPレコード片面を聞くのにちょうどよい待ち時間で、その日の気分によって「今日はこれのA面を(B面を)」と3枚を聴き分けていた。

JAZZに全く縁のないころで、どんな音楽が鳴り出すか見当つかなかったが、ジャケットの2人の厳粛な姿に引きつけられ聴いたらいっぺんに好きになった。今で言う「スピリチュアル(Spiritual)」というのか、当時はプログラマーを職業としていたのだが、デバッグに行き詰まった時に霊感でも得たかったのか、これを聴くと妙に気持ちが落ち着いた。


この頃(1962年録音)のコルトレーンは完全主義者で何回も演奏したがるのを、エリントンがうまく制御して全曲ワン・テイクでレコーディングを終わらせたと言われている。そのあたりの抑制感がアルバム全体を通して出ているようで、私はエリントンから教示を得ていたのかもしれない。


「キャンディーズ」「スタイリスティクス」「デューク・エリントン&ジョン・コルトレーン」とまるで脈絡がないようだが、心のバランスを保つ組み合わせとして、とても良い選択だったと今でも思う。


RVGに出会えない

大船勤務を離れて、長い間このアルバムともお別れしていたが、JAZZを聴くようなったある日、安い日本盤を見つけたので再会することにした。結果、感動がすぐに蘇りあの時の選択は間違っていなかったことを再確認した。


インパルスの日本盤は音が良いが、このアルバムもルディ・ヴァン・ゲルダー(Rudy Van Gelder)録音と知ってから、いつか刻印のある盤を聴いてみたいと気をつけていたが、なかなか見つからない。あまりに見つからないので「1枚のLPレコード購入にかけた最高額は8千円」の禁を破り、ある中古レコード店に「1万円以内なら購入する」のWANTEDを出したが数年経っても音沙汰なし。


ある日、例のJAZZ仲間から「オリジナルが1万5千で出てる。今度その店に行く用事があるけど、どうする?」とそそのかされた。「う~~ん、よしっ!買った!」と宣言したが、あっという間に売れてしまって手に入らなかった。実はその時、ほっと胸をなで下ろしたことを彼には伝えていない。


やっと会えました

「欲すれば逃げる、欲せずば寄ってくる」、本盤は最近千五百円程度で手に入れた再発のUS盤。残念ながらVANGELDER刻印はB面だけで、A面は後日別なエンジニアがリカッティングしたもの。コルトレーンのサックスの実体感がB面に比べA面は薄い。盤質もイマイチなこともあり気長に探索は続けるつもりだが、しばらくはこの盤を楽しむことにします。



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