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「AORの部屋」オープン


「LPレコード余話」で、『近い将来、私のフェイバリットである「AORの部屋」というサブメニューを新設したい』と述べました。HP開設1周年を迎え、そろそろ歩み出したいと思います。


AORは「Adult-oriented Rock(アダルト・オリエンテッド・ロック)」の略で、直訳すれば「大人向けロック」でしょうか。米国では現在、AORという言葉は通用せず、「AC(Adult Contemporary)」と呼ぶジャンルになるのだそうです。


AORの代表的アーティストといえば、「ボビー・コールドウェル(Bobby Caldwell)」「ボズ・スキャッグス(Boz Scaggs)」「トト(TOTO)」あたりが定番になりますが、私のAORど真ん中は「LPレコード余話」でも紹介した「カーラ・ボノフ(Karla Bonoff)」です。


しかし、バイブル的ガイドブック『AOR』(株式会社シンコー・ミュージック、2002)で、著者の中田利樹氏は『カーラはやはりウエスト・コーストというジャンルであって僕のAOR感とは異なる』として除外しています。ただ、氏は同著で『AORは人それぞれのAOR感があるから面白い。聴く人がAORだと思えば、リンダ・ロンシュタットだってプリファブ・スプラウトだって、はたまたチェット・ベイカーだってAORに入れて構わないのである』『十人十色のAOR感がそれぞれの個性、人間性を表現している』と述べています。この考えには深く同調できます。このメニューで紹介するLPレコードは、あくまで私のなかのAORです。「これは違うぞ」と思われても、何卒ご容赦のほどお願いいたします。


このメニューを開設するにあたり、私が考えるAORのLPレコードリストを作成していて気がついたことがあります。そのレコードのほとんどが1975~85年の約10年間にリリースされたもので、昭和50年代に集中していることです。


コンパクトディスク(CD)の生産開始が1982年。84年にソニーから5万円を切るポータブルCDプレーヤー(D-50)が発売され普及に拍車がかかり、86年に販売枚数でCDがLPを追い抜いています。


私には、この符合が偶然とは思えません。昭和50年代、秋葉原の石丸電気で、輸入盤コーナーに準新譜のカット盤(見切り品)を中心とした980円の廉価盤が大量に並んでいました。時には780円という値付けもあり、定価の2000~2500円に比べずいぶんと割安感があり、何度も通ったものです。また、LPやカセット・テープのソフトを買うと10パーセントの割引券がもらえ、それを貯めて欲しいレコードをまとめ買いするのも楽しみでした。


当時、何を参考にLPレコードを買っていたかというと、第一にラジオ番組のエアチェック。第二が『月刊誌ステレオ』(音楽之友社)の新譜紹介、その頃は巻末に相当なページを割いてLPレコードの新譜が評者の評価順に紹介されていました(スミマセン、ほとんど立ち読みでした)。そして第三が「ジャケ買い」です。そうして取捨選択しながら集まっていったレコードに何故かAORの範疇に入るものが多かったのです。


後発CDの定価は3000円台、準新譜でも廉価で購入できるものは少なく、また、CDで「ジャケ買い」も考えにくいもので、昭和50年代はLPレコードとの蜜月の時代だったと思います。そうなると、CD世代のAORファンから見れば、かなり古臭い内容になっていると思いますが、重ねてご容赦のほどお願い申し上げます。


今でもよく思い返しますが、石丸電気の輸入盤コーナーは、それはそれは素晴らしい世界でした。




[参考文献]

・中田利樹著『AOR』(株式会社シンコー・ミュージック、2002)