タイトル | 二人のフェリーロード (Dowdy Ferry Road) |
アーティスト | イングランド・ダン&ジョンフォード・コーリー (England Dan and John Ford Coley) |
レーベル/番号 | Big Tree Records, BT 76000 |
1977年にリリースされた、イングランド・ダン&ジョンフォード・コーリー(England Dan and John Ford Coley)の通算5枚目のアルバム『二人のフェリーロード (Dowdy Ferry Road)』。
彼らを初めて知ったのは、フォーク全盛の中学時代にヒットした『シーモンの涙(Simone)』(1972年)でした。その優しいメロディーは私のなかで強く印象に残り続けました。その次に再会したのは、大学1年の時だったと思いますが、『秋風の恋(I'd Really Love to See You Tonight)』(1976年)のスマッシュヒット。それから彼らを追い続けることになりました。
高校時代からAOR系の音楽に傾注していったのですが、私の周りでその手の音楽を聴く人は皆無でした。そんな頃、湯川れこ子がパーソナリティーの伝説のラジオ番組「全米トップ40」で『秋風の恋』がランキングを駈け上がり(全米2位。ゴールドディスク)、友人が「あれいいね」と言ってくれたのが嬉しかった思い出があります。
しかし、これは例外なケースで、本場アメリカでもAORはマイナーな音楽だと長い間信じ込んでいました。しかし数年前、題名は思い出せないのですが、アメリカの翻訳小説を読んでいて「ラジオをつけると、ダン&コーリーの曲ばかりでつまらない」のような一節を見つけて驚きました。
最近では日本でも中古レコード店が取り扱うジャンルに「AOR」を掲げることも珍しくなく、決してマイナーな音楽でないことを再発見。50歳を過ぎて、ようやく市民権を得た気がしています。
話を元に戻して、このアルバムを最初に紹介するのは、彼らのなかで一番聴き込んだLPレコードだからです。
下は歌詞が印刷されているインナースリーブ(内袋)です。
日本盤では、歌詞の原語と対訳を掲載することが慣例になっていますが、米盤では、歌詞が掲載されない方が普通です。このように米盤で掲載されるということは、アーティストがいかに歌詞に重きを置いているかが分かるサインでもあります。
本盤のなかで気になる曲といえば『(A3)ソルジャー・イン・ザ・レイン(Soldier in the Rain)』。なぜかそのメロディーが耳に残るのです。アルバムラストが重厚な管弦楽で始まる『(B5)ホロコースト(Holocaust)』。私は戦争をテーマにしたシリアスなアルバムという印象を長らく抱いていました。今回改めて聴き直してみると、その思い込みが見事に覆されました。
私は『Soldier in the Rain』を雨の中を行軍する兵士を歌ったのだろうと勝手に想像していました。日本盤のライナーノーツに、翻訳家・武内邦愛氏の素晴らしい訳が掲載されています。その冒頭の部分を紹介させて頂きます。
朝の霞があたりを覆う中
僕は橋の上に立つ
もうここに来て何年が過ぎただろう
僕はどれ程変わったのだろうか
走りまわるタクシー
乗り換えを尋ねる盲人
僕はここに立つ、雨の中の兵士
なんと、望郷の想いをつづった歌だったのです。さだまさしの『風に立つライオン』に似ていると言ったら乱暴でしょうか。そして、エンディングの歌詞です。
僕はなぜここに居るのだろう
答えは見つからない
こうして立つ僕は雨の中の兵士
雨の中、雨の中、雨の中の・・・・・・・
『風に立つライオン』の主人公は、善人のかたまりの孤高の医師で憧れますが、多くの人が共感するとしたら『Soldier in the Rain』の方ではないでしょうか。
何事も真剣に向き合わないと本質は分からない。このアルバムに教えられた気がします。
A1 | Dowdy Ferry Road | 3:21 |
A2 | Tt's Sad to Belong | 2:52 |
A3 | Soldier in the Rain | 4:43 |
A4 | Love is the One Thing We Hide | 2:51 |
A5 | Gone Too Far | 2:55 |
B1 | Where Do I Go From Here | 2:54 |
B2 | Falling Stars | 2:52 |
B3 | You Know We Belong Togerther | 2:57 |
B4 | Don't Feel That Way No More | 3:05 |
B5 | Holocaust | 3:08 |