タイトル | アナザー・ナイト (Another Night) |
アーティスト | ウィルソン・ブラザーズ (Wilson Brothers) |
レーベル/番号 | Atco, SD 38-116 |
1979年にリリースされた、ウィルソン・ブラザーズ(Wilson Brothers)のデビュー・アルバムにして、唯一のLPレコード『アナザー・ナイト(Another Night)』を紹介いたします。
私は本盤にAORの匂いを感じ、純粋なジャケ買いで手に入れたと記憶しています。そして見事どんぴしゃ的中したことでも、思い出に残る盤になりました。
私はボーカルの、デュオというフォーマットが大好きで、日本盤の小倉エージ氏のライナーノーツによると、大好きなデュオ・グループ、イングランド・ダン&ジョン・フォード・コーリー(England Dan and John Ford Coley)が、彼らの曲を取り上げたのをきっかけに、ダン&コーリーのプロデューサー、カイル・リーニング(Kyle Lehning)に注目されることとなり、アトコ・レコード(Atco Records)と契約、デビューすることになったとあります。カイル・リーニングは本盤のプロデュースも務めています。
ジャケット表裏の写真です。裏に彼らのポートレイトがあります。右が兄のスティーヴ・ウィルソン(Steve Wilson)。左が弟のケリー・ウィルソン(Kelly Wilson)。ジャケット表の左下、裏の右下に、カット盤(見切り品)の切れ込みがあります。そのおかげで、安価で手に入れることができました。
ジャケット裏のミュージシャンのクレジットです。ウィルソン・ブラザーズの下、ドラムスの「ケネス・バットリー(Kenneth Buttrey)」の紹介に注目して下さい。「Drums and strange perspectives」の「perspectives」の文字が逆さまになっています。日本盤では、これを誤植として修正しています。しかし、「strange perspectives」は「奇妙な見方」というような意味でしょうか?シャレでワザと逆さまに文字を配置しているような気がします。
ベースの「ジャック・ウィリアムズ(Jack Williams)」は、「Bass and patience(忍耐力)」。
キーボードの「シェーン・キースター(Shane Keister)」は「Keyboards and great pig calls(大きな豚の鳴き声)」。
ギターの「ジョン・ゴイン(Jon "Git" Goin)」は「Electric & acoustic guitars and stability(堅実性)」。
パーカッションの「ファレル・モリス(Farrell Morris)」は、「Percussion and surprises(驚き)」。
確かに外盤のクレジットには、驚くような誤植を見かけることは珍しくありませんが、この場合は「ワザと逆さまに文字を配置した」を支持したいと思います。誤植かどうかは別にしても、コンサートの気のおけないメンバー紹介のようで、レコーディングの楽しい雰囲気が伝わってくるようです。
多くのゲスト参加のミュージシャン紹介です。最大の注目は、筆頭にクレジットされている、ギターのスティーヴ・ルカサー(Steve Lukather)でしょう。『(A2) アナザー・ナイト(Another Night)』以外の9曲で、ギター・ソロを披露しています。本盤リリースの79年といえば、前年78年デビューのTOTO人気沸騰のころで、日本でもスティーブ・ルカサーのギター目当てで本アルバムを購入したファンがたくさんいて、好セールスにつながったと言われます。
本盤で、不思議に思っていることがあります。それは、ハイライトの曲をA面ではなく、B面に持ってきていることです。兄のスティーヴが敬愛するトッド・ラングレン(Todd Rundgren)、78年の曲『(B2) Can We Still Be Friends』。しっとりしたバラードで、全体的にアップテンポの曲をそろえたなかで、良いアクセントになっています。そして、何といっても、自作曲『(B4) Take Me To Your Heaven』のドラマティックな展開と、見事なコーラス。AORのスタンダードになり得る素晴らしい曲です。
そして、一番の疑問は、これほどレベルの高いAORをリリースしたのに、アルバムはこれ1枚きりということです。日本盤のライナーノーツでも、小倉エージ氏は『ソング・ライターとして、また、ミュージシャンとしての今後の活躍が大いに期待されます。』という言葉で結んでいます。残念でありません。
A1 | Feeling Like We're Strangers Again | |
A2 | Another Night | |
A3 | Thanking Heaven | |
A4 | Shadows | |
A5 | Just Like A Lover Knows | |
B1 | Lost And Long Way From Home | |
B2 | Can We Still Be Friends | |
B3 | Ticket To My Heart | |
B4 | Take Me To Your Heaven | |
B5 | Like Yesterday |