タイトル | シングス・アー・スインギン (Things are Swingin') |
アーティスト | ペギー・リー (Peggy Lee) |
レーベル/番号 | キャピトル(Capitol) ,T1049 |
前ページに引き続き、キャピトル(Capitol)のペギー・リー(Peggy Lee)を紹介します。『ビューティー・アンド・ザ・ビート(Beauty And The Beat)』と同じ、1959年にリリースされたLPレコード。
本盤はジャケットの状態が悪かったので格安で手に入れたが、盤質に問題はなかった。
彼女の特長を説明するため、岩浪洋三氏の『ジャズ・ヴォーカルの名唱名盤 』(立風書房、2000年)のペギー・リーの項の冒頭を引用させて頂く『ペギーは1983年だったかに、リナ・ホーンにならってブロードウェイで自伝的ミュージカル「ペグ」に出演したが、なんとわずか一晩で閉幕に追い込まれ、ひどい屈辱を味わった。ドラマティックな歌い方をしないペギーにブロードウェイのステージはしょせん無理である』『ささやくようにソフトにデリケートに歌うのがペギーの個性だからだ』。
厳しい指摘でびっくりするが、岩浪氏の愛情の裏返しの表現で、私も強くうなずける。
彼女の歌い方は、ミュージカルのような、しつこい歌唱には向かないが、淡泊というわけでもない。少しかすれ気味だが(そこがいいのだが)、ただのハスキー・ボイスとは言えない力強さ、艶っぽさがある。ささやくような歌唱が得意だが、その時も、ただのウィスパー・ボイスとは言いたくない。奇跡の地声、バランスを彼女は備えていると思う。本盤は、彼女の魅力を余すところなく伝えていると思う。
先ほどの岩浪洋三氏『ジャズ・ヴォーカルの名唱名盤 』からの引用だが、ペギー・リーは1944年末から1951年7月までキャピトルで録音を行い、52年春からデッカ(Decca)に移る。デッカ時代の最高傑作と言われている『ブラック・コーヒー(Black Coffee)』を次回紹介したいと思います。彼女は、キャピトルに56年にもどってきて、数多くのアルバムを吹き込むが、キャピトルに復帰しての最初のヒットが本盤に収められている『あなたの勝ちよ(Alright, Okay, You Win)』だと言う。
私がその曲を初めて聴いたのは、三宅裕司とのコントライブで、小倉久寛がドスを利かせて歌った時で、岩浪氏によると、ペギー・リーは『ちょっと鉄火女風に歌った』とあるが、そのドスの利かせ方の対比が面白く、私のなかで強く印象に残り、この曲への愛着が増すことになった。
本盤は全体を通して統一感があり、どの曲を取っても秀逸だが、バラード好きの私が1曲挙げるなら、ただのウィスパー・ボイスではない囁き声で歌うB面4曲目『You're Getting To Be A Habit』。
盤質が良ければ、ジャケットの状態は気にしない私だが、このレコードに関してはピッカピカを手にいれて飾っておきたいなと思ってしまうほど美しいアルバムである。
[参考文献]
・岩浪洋三著『ジャズ・ヴォーカルの名唱名盤 』(立風書房、2000)