タイトル | クローズ・イナッフ・フォー・ラヴ(Close Enough For Love) |
アーティスト | ペギー・リー (Peggy Lee) |
レーベル/番号 | DRG RECORDS ,SL5190 |
ペギー・リー(Peggy Lee)の新旧の新、1979年にリリースされたポップ路線の『クローズ・イナッフ・フォー・ラヴ(Close Enough For Love)』を紹介したい。
彼女のアルバムのなかで知名度は低いが、AOR好きの私としては震えが来たLPレコード。
最初から最後まで、ただのウィスパー・ボイスではない、ささやくような声で歌う。アルバム全体を通しての印象を悪くとれば、アンニュイ、けだるい、眠くなるといったことになるが、込められているメッセージは深く強いと思う。
リタ・クーリッジ(Rita Coolidge)の大ヒット曲『You』の軽快なメロディーで始まる。冒頭のこの一曲で、今までのアルバムとはちょっと違うぞと教えてくれる。
ポール・ウィリアムス(Paul Williams)、キャロル・ベイヤー・セイガー(Carole Bayer Sager)、マイケル・フランクス(Michael Franks)といった、そうそうたるポップスの大御所の曲が並ぶなかで、ペギー・リーの自作が違和感なく2曲入る。A面2曲目『Easy Does It』、B面3曲目『In The Days of Our Love』。後者は何と私が大好きな女性ジャズ・ピアニストのマリアン・マクパートランド(Marian McPartland)との共作。マリアン・マクパートランドのレコードは後日たっぷり紹介したい。
私が特に心動かされたのはキャロル・ベイヤー・セイガーのB面4曲目『Through the Eyes of Love』。耳に馴染んだメロディーをペギー・リーがソフトに説得力豊かに表現してくれた。
私は本盤をただの企画物ととらえていない。きらびやかなポップスを、ペギー・リーが「私はこういう風に歌いたい」と確信を持って取り組んでいるのがわかる。だから、全曲を通しブレがない。
うまく表現できないが、彼女の歌い過ぎない、独りよがりにならないサービス精神が根底にあり、前回紹介した『ビューティー・アンド・ザ・ビート(Beauty And The Beat)』『シングス・アー・スインギン (Things are Swingin')』の底にも同じものが流れていると感じる。
私はなぜペギー・リーが好きなのだろうか、本質的な答えがこのLPレコードにある気がしている。