タイトル | フェルコ・ストリング・バンド(The Ferko String Band) |
アーティスト | フェルコ・ストリング・バンド(The Ferko String Band) |
レーベル/番号 | リージェント(REGENT), MG-6085 |
刻印RVG |
私が所有する刻印RVGのなかの珍品中の珍品?
今はない秋葉原のある中古レコード店で、『アニタ・カー(Anita Kerr)』でもないかとイージーリスニング・コーナーを探していて偶然見つけた。変わったレコードだなとジャケット裏を確認したら「mastered by: RUDY VAN GELDER」のクレジットが目に入り購入。
家に帰り針を降ろすと、パレード中のマーチングバンドを録音したものと分かるが、RVGらしからぬ、ひどい音。ラジカセで生録したのでは、いやラジカセで生録した方が音が良いのではと思うぐらいである。
タイトルが『The FERKO STRING BAND(フェルコ・ストリング・バンド)』、サブタイトルが『Championns of Philadelphia Mummers Parade』。Mummers Parade(ママーズ・パレード)は、フィラデルフィアで新年(元旦)に開催される恒例行事らしい。フェルコ・ストリング・バンド(The FERKO STRING BAND)は、出場マーチングバンドの常連で、サブタイトルから優勝した時の録音であろう。
それでは一体いつ頃の録音であろうか?ファルコ・ストリング・バンドを本場のウキぺディアで調べると「Philadelphia Mummers Parade results」という章立てがあり、パレード参加がバンドの一大イベントであることが分かる。地元フィラデルフィアを拠点に1922年(大正11年)に結成。翌23年パレード初参加。27年に初優勝。以降何度も優勝を飾っている。ジャケット裏のライナーノーツにヒントがあった。「THE JOSEPH A. FERKO STRING BAND have been 12 times champion of the Philadelphia Mummers Parade」。12度目の優勝は1951年(昭和26年)。とすると、素直に51年録音&発売と解釈するのが妥当に思われる。本盤は「Volume No.3」とあるので、同じ日の録音が少なくともあと2枚は存在することになる。
また「recorded with newest and best recording techniques」と音の良さを強調する記述もあるが、51年の街頭録音では致し方ないのだろうか、ただLP初期のモノラルレコードなので、針圧10gもあるモノラルカートリッジで再生すれば違った音が聴こえてくるのかもしれない。 51年といえば、ブルーノート初仕事の2年前。どこにも属さずフリーの録音技師を貫き通したルディ・ヴァン・ゲルダーは仕事を選ばず時間が空いていれば順番に仕事を入れていたという。
本盤の「リージェント(Regent)」というレーベルを私は知らなかったが、1947~64年の間に存続したサヴォイ(Savoy)の子会社で、エロール・ガーナー(Erroll Garner)、ディジー・ガレスピー(Dizzy Gillespie)などで往年のジャズファンなら馴染みのレーベルらしい。
上記のように本盤には「notes: H.ALAN STEIN」「mastered by: RUDY VAN GELDER」「Production: OZZIE CADENA」のクレジットがある。制作(Production)のオジー・カデナ(OZZIE CADENA)は、サヴォイ(Savoy)、プレスティッジ(Prestige)などで活躍したゴスペルとジャズの有名なプロデューサーで、サヴォイで51年からレコード制作に携わったとあるので、本盤はその最初期の仕事と推測できる。
H.ALAN STEIN氏が録音したテープからルディ・ヴァン・ゲルダーがカッティングを行いプレス原盤を製作したものと思われる。どんな録音であっても、原盤にしっかりRVGの刻印を残して責任を取るという姿勢に職人的なプロ意識を感じる。それを象徴するレコードとして私の宝物である。